コオロギの音源定位行動 | ||||
A: 雌コオロギの頭部から胸部.鼓膜器官は前肢の脛節基部の両側にある(矢印).B, C: 鼓膜器官の拡大写真.Bは身体の外側,Cは内側を向いている. 矢尻で示した部分が受容器にあたる.スケールは1 mm.雌は雄の奏でる誘引歌を聴き,その音源に向かって歩き始める(音源定位). |
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雄コオロギは3つの異なる鳴き声を奏でる.雌に対して発する誘引歌と求愛歌の他に,別の雄と喧嘩して勝った後に発する「リーッリーッ」という闘争歌(aggressive song)である.コオロギの雄の前翅には,クチクラが特殊化してできた鑢とこれに接する摩擦片からなる摩擦器がある.雄はこの摩擦器を擦り合わせて鳴き声を発する.摩擦器が一回擦り合わさり発音したものはシラブル(syllable)と呼ばれる.いくつかのシラブルが組み合わさりチャープ(chirp)を構成する.鳴き声はチャープとそれに続くインターバルで構成されている. |
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クロコオロギの求愛行動戦略 |
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一度交尾をした雄コオロギは,次の交尾のために新しく精包を準備する必要がある.この間は摂食,吸水,闘争などの行動は発現するが,交尾行動は一切発現しない.雄コオロギの行動のうち,求愛歌の始まりから交尾までの間隔,次の交尾のために精包を準備する間隔,精包準備から次の求愛歌までの間隔は常に一定で,1時間の周期になっている.この交尾行動の周期の調節には,オクトパミンやセロトニンと呼ばれる生体アミンが働いている. |
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昆虫には,発音や化学物質を用いてコミュニケーションをするものが多い.たとえば,秋の夜長に耳にするコオロギの鳴き声は,オスのコオロギがメスを呼ぶための発音行動である.その鳴き声に引かれてメスがやってくると,オスは求愛をはじめ,メスに受け入れられたら交尾が可能となる.コオロギは近づいてきた他個体の性別を知る手がかりとして相手の体表を覆うワックスに含まれる化学物質を使っている.この化学物質は主に炭化水素から構成された成分で,オスのものであれば闘争行動,メスのものであれば求愛行動を解発する(発現させる)ことから,この体表化学物質を体表フェロモンとも呼んでいる. オスの体表フェロモンは,同種のオスに対して闘争行動を解発する(図2).オス同士は,お互いの存在に気づくと1)互いに触角を激しく打ち振るわせ,2)脚を踏ん張り前傾姿勢で威嚇を始め,3)どちらも引かなければ大顎を開き相手に突進し,4)噛みつき合いの闘争を始める,5)どちらかが退くことで決着が着き,勝者のオスは闘争歌を発しながら敗者を追い払う.このコオロギの闘争は始まってから数秒程度で終決してしまう行動である. |