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匂い源探索行動の基本パターン
匂い源への定位行動を参照ください.
ここでは匂い源探索行動を解発する神経機構として、カイコガでよく調べられているメスの放出する性フェロモンにたいするオスのフェロモン源探索行動に焦点をあて説明していく。基本的にカイコガのオスはメスの放出する性フェロモンの断続的な塊(フィラメント)に遭遇すると二つの異なる性質をもった歩行パターンを順番に示す。すなわち、

1) 匂いを受容している間、匂いが来た方向への直進歩行。
2) 匂いがなくなると、小さいターンから次第に大きくなるジグザグターン     
を繰り返して回転に移る歩行パターン。(この歩行パターンは一度起こると30秒から数分の間持続する。)

そしてこの行動パターンはフェロモンのフィラメントを受容するたびにはじめから同じように繰り返される。したがって、フェロモンのフィラメントを受容する頻度が高いくなるほど−つまりフェロモン源に接近するほど−(1)の直進歩行が繰り返され、フェロモン源に対し直進することになる。一方、フェロモンのフィラメントを受容する頻度が少ない場合−つまりフェロモン源から離れている場合−ジグザグターンや回転が組み合わさった複雑な経路をとりながらフェロモン源を探索することになる。このようにカイコガは空中のフェロモン分布のパターンをうまく利用して、直進とジグザグターン・回転からなる行動を繰り返すことにより、複雑に変化するフェロモン分布の環境下で匂い源の探索を行う(図?)。(この行動パターンはフェロモン以外の一般臭にたいしても行われる。)このシンプルな匂い源探索の行動パターンは定型的なものではあるが、嗅覚以外の感覚、視覚や触角などやカイコガ自身の嗅覚経験されにはカイコガ自身の内部状態などによっても修飾されうる柔軟性を持っている。
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