昆虫の脳を構成するニューロン
戻る
 昆虫の脳は,ニューロンとグリアといわれる細胞からなる.ニューロンもグリア細胞ももとは同じ細胞(幹細胞)から分化する.グリア細胞はニューロンの構造の維持などニューロンのサポート役として機能する.そして,脳の働き(情報処理)の中心はニューロンである.「神経細胞」ともいう.ニューロンというのはギリシア語の「すじ」というのが語源である.ニューロンの基本的な構造と機能は動物を通して共通している.ニューロンが回路をつくって情報処理をするような神経系は,イソギンチャクやクラゲなどの刺胞動物ではじめて現れ,次第に複雑な神経回路からなる脳を獲得していった.昆虫は下等だから,高等なヒトとはちがったニューロンからできているということはない.ただ,昆虫の寸法は,センチメートル程度である.したがって,脳のサイズも小さくなり,昆虫の脳をつくるニューロンの数は哺乳動物の脳に比べて桁違いに少なくなる.ヒトの脳が1000億なのに対して,昆虫の脳はわずかに10万から100万個である.
 昆虫の脳をつくる個々のニューロンはその形とはたらきによって特徴付けられるものが多く,「同定ニューロン(identified neuron)」といわれる.昆虫の脳の研究は,このような「少数」,「同定」という特徴を活かして単一のニューロンレベルからその素性を明らかにしながら,脳を理解するという方法がとられてきた.
戻る