戻る 昆虫の習性に基づく建築的防虫法
建築的防虫手法とは
生産施設(工場)や物流施設(倉庫)内の製品への昆虫異物の混入を防ぐ,物理的防除技術の研究がすすめられている.この技術は原則として,殺虫剤などの化学的防除技術を含まず,施設の新築や増改築時に,その建物の構造・設備などの建築手法により昆虫異物の混入を防ぐ技術である.昆虫の生態・習性を配慮し,建物への侵入経路や屋内での繁殖可能な場所に何らかの工夫・対策をすることで,昆虫異物の混入を防ぐ減らすことができる.

建物内部で繁殖する昆虫対策
建物内部での昆虫繁殖には建物の構造・設備などのハード面の対策だけでなく,日常の清掃と生息状況の監視を中心とした,管理・運用といったソフト面の対策も重要である.そこで,こういった昆虫繁殖を防ぐための建築的防虫対策の役割は,そういった清掃や監視などを容易に実行できるハード面を提供することである.具体的には壁と床の接合部に丸みをつけたり,窓枠に角度をつけたり照明を埋め込みにしたり,水平配管や凹凸の多い壁面構造を部屋内に露出させないことで,清掃を容易にしたり,昆虫の温床になりやすいゴミ溜りや粉溜りを解消することを目的としている.また,屋内での昆虫の繁殖には温度と湿度が重要な要因である.屋内で繁殖する昆虫の発育零点(昆虫の発育できないもっとも高い温度)は10℃前後から20℃前後の間に,また発育最適温度は25℃から30℃の間にある.そこで,屋内の温度をコントロールするコストも考慮して,昆虫の餌となりうる原材料を長期保管するところだけでも空調の負担の比較的少ない15℃前後に維持することで,昆虫の繁殖を抑制することができる.また湿度を60%以下に抑えることによって昆虫の餌となりうるカビの発生を抑えることによっても昆虫の繁殖をある程度抑制することができる.

外部からの侵入昆虫対策
建築的な防虫手法としては外部からの侵入昆虫対策により重大な責任を負っている.工場でも倉庫でも,建物内部の昆虫捕獲調査を実地すると,ユスリカやクロバネキノコバエなど外部から飛来する双翅目昆虫が圧倒的に優占している.そこで外部からの侵入昆虫対策としては,建物の気密性の向上,建物の空気圧の調節,照明方法と光源の選択が重要である.



戻る