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昆虫のセンサ・脳・行動機能の工学的利用として,これまで大きく2つの方向から研究が行われてきた.1つは,機械システムの知能化を昆虫のセンサ・制御系の単純,高速,経済性を手本にして学ぼうとする研究である.2つ目は,昆虫のセンサや脳神経系の人為的な操作を介した昆虫の行動制御,すなわち昆虫の機能をそのまま利用しようとする研究である.そして今,これらの研究は,昆虫とロボットを融合したり,遺伝子操作技術を取り込むことにより大きく発展し,昆虫機能の理解・再現・利用へと新しい展開を遂げつつある.昆虫力の理解・再現・利用は,IT (Information Technology) RT (Robot Technology)BT (Biotechnology) が融合した新しい分野として,日本のイノベーション創出に大きく貢献することが期待される.

以下に、これまでに昆虫機能が利用された、また利用されつつある例を挙げる。



<<材料>>


クモの糸

クモの分泌する糸は非常に柔らかくかつ強いといわれてきた.このクモの糸の機能を調べることは理学的に興味深いうえ産業利用にも通じるものがある.

クチクラ

昆虫の翅の柔軟なロボット関節への応用


<<感覚システム>>

匂いセンサ


昆虫は、きわめて鋭敏な嗅覚能力を持つ。また、最近、匂いの受容機構が明らかとなり、遺伝子工学技術を駆使することにより、昆虫の嗅覚受容体を用いたリアルタイムと高感度、高選択性を有する匂いセンサの開発がおこなわれている。

匂い源探索ロボット

ファーブル昆虫記にもあるように、昆虫は、数キロも離れた匂い源を探索するといわれる。このような遠距離定位の行動戦略や神経機構を活用することで、匂い源を探索するロボットの開発がおこなわれている。

人工感覚毛センサ

コオロギの尾葉には、糸状感覚子といわれる高感度に空気の動きを検知できる感覚器がある。この感覚器と類似の構造をMEMS技術により製作できるようなり、高感度な気流センサが製作されている。

サバクアリの視覚ナビゲーション
太陽からの光は、天空に偏光のパターンを形成する。昆虫の複眼の背部には、偏光検知が可能な視細胞があり、天空の偏光パターに一致して配置されている。この構造を活用することにより、昆虫は太陽の方向を検知し、巣との位置関係を計算することができる。

コオロギによる音源定位

コオロギは、前脚に鼓膜器官をもち、左右の鼓膜器官は、気管を介してつながっている。このような構造から、左右からの音の音圧を構造的に増強したり、減衰させることができる。この構造的な機構を音源定位に用いている。

ハエにヒントを得た視覚誘導飛行ロボット

昆虫は複眼により、背景の変化を検知することができる。また、物体の動きを検知するが、その空間分解能は極めて低い。一方、時間分解能は我々をはるかにしのいでいる。このような複眼による■情報処理機構を活用することで、視覚誘導飛行ロボットの制御が行われている。

単眼による飛行安定装置

単眼は形状を見ることはできないが、明暗を区別することができる。通常3つの単眼が三角形状の分布しており、昆虫の飛行時の体軸の傾き具合によって3つの単眼への光の強度が変化する。この強度変化を検知することで、ジャイロの機能を果たしている。


<<ロボット制御>>


昆虫が操縦するロボット

昆虫は極めて小規模な脳により優れた行動機能を示す。昆虫自身にロボットを操縦させること、あるいは昆虫の脳からの信号によりロボットを制御する研究がおこなわれている。

昆虫による飛行関連ロボット

翼長が10cm以下の小さな飛行システムを製作するのは困難である。しかし、翼長が1cm以下の昆虫でも羽ばたきによって飛行を実現している。昆虫の羽ばたき飛行のしくみを解明し、飛行ロボットに活用する研究が進められている。

昆虫の歩行と歩行制御ロボット

昆虫は、6脚歩行を行うが、常に3脚で体を支えて歩行する。この歩行は静的な歩行にあたり、きわめて安定している。また、この歩行の神経機構も明らかになってきた。このような機構を活用することで、6脚歩行ロボットが製作されている。


<<昆虫の行動を制御する>>

昆虫の行動を遠隔で制御する

昆虫に小型の刺激装置を搭載し、それを遠隔で操作することにより、昆虫の行動をコントロールする研究がDARPAにより進められている。


<<建築的防虫法>>

昆虫の習性に基づく建築的防虫法

生産施設(工場)や物流施設(倉庫)内の製品への昆虫異物の混入を防ぐ,物理的防除技術の研究がすすめられている.


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