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ミツバチの特徴的行動


藍浩之(福岡大学理学部地球科学科)


1.コミュニケーション行動

社会性昆虫であるミツバチは、他の昆虫では見られない特有のコミュニケーション行動をする。音(振動を含む)や匂い(フェロモン)を用いた複雑なコミュニケーションについては、行動学的研究が進んでいる。以下に、これまでにミツバチでわかっているコミュニケーションを概説する。

a.聴覚コミュニケーション

尻振りダンス、円形ダンス (waggle dance, round dance)
ミツバチは蜜源を見つけると巣内の垂直な巣板の上でダンスを行い、仲間に蜜源の方向と距離を伝える。これは本能行動の例としてたびたび使われる。ミツバチのダンスは蜜源の場所という具体的な情報をダンスという抽象的な情報に変換して伝達が行われるため、記号的コミュニケーションであると考えられている。ミツバチのダンスコミュニケーションを発見したカール・フォン・フリッシュは高次なコミュニケーション能力が昆虫にもあるという発見が評価され、ニコ・ティンバーゲン、コンラート・ローレンツと共に1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。




図1 ミツバチの尻振りダンス。矢印の蜂がダンス蜂。


蜜源が近い場合には、体を振りながら左右に交互に円形を描く「円形ダンス」をおこなう。蜜源が遠い場合(50m?)は「尻を振りながら直進 - 右回りして元の位置へ - 尻を振りながら直進 - 左回りして元の位置へ」という、いわゆる「 8の字ダンス(尻振りダンス、図1)」を繰り返す。このとき尻を振りながら直進する角度が太陽と蜜源のなす角度を示しており、真上が太陽を示す。つまり巣板上で右手水平方向に向かって尻を振るような8の字を描いた場合、「太陽を左90°に見ながら飛べ」という合図になる。また、ダンスの時の尻を振る速度が蜜源までの距離を表す。すなわち尻振りの速度が大きいときは蜜源までの距離が近く、速度が低いときには距離が遠い。尻振りダンスに追従したハチの多くは、蜜の採集で出巣するが、必ずしも尻振りダンスによって指示された蜜源にリクルートされるわけではない。また尻振りダンスの間にダンサーはフォロアーに対して蜜のサンプルを少量渡す。このことによって蜜源の匂いを伝達することできる。花粉や水の採集、分蜂時の新たな巣の場所決定に際しても、同様のダンスによるコミュニケーションが行われる。

蜜を持ち帰った働きバチは、貯蔵係のハチに蜜を渡すが、そのとき貯蔵係は糖度の高い蜜を優先して受け取り、糖度の低い蜜を持ったハチは待たされる。このことによって、よりよい蜜源へ働きバチを集中的に動員できる。(ウィキペディアより)。ミツバチの尻振りダンスの際、振動が情報伝達において重要な感覚刺激として機能していることがわかっており、尻振りダンスに表現される蜜源情報がいかに脳内で解読されているのかを調べる研究が盛んに行われている。

振身ダンス (tremble dance)
振身ダンスは、巣内でより多くのミツバチを採餌に招集するために行われるダンスと考えられてきた。このダンスは1920年にカール・フォン・フリッシュによって記述されたが、近年まで注目されていなかった。1993年に ウォルフガング・キルヒナーは このダンスが採餌に向かうハチのそばで停止することを発見した。このダンスは、採餌バチが巣において蜜を受け取るハチが少ない、または受取までに時間がかかった場合に採餌バチによって踊られる。また蜜源でのハチの過密によってもこのダンスが生じることがわかっている。

ワーカーパイピング
働き蜂は200-600 Hz, 数100msの音を単発または断続的に発する。これをワーカーパイピングと呼ぶ。特に短い時間で生じるパイピングについては、いくつか行動学的意味付けがされているが、確定してはいない。以下に現在考えられている役割について箇条書きにする。

1.stop signal: 尻振りダンスの追随蜂が、尻振りダンサーに対しておこす。ダンサーに指し示された蜜源へのリクルートをやめさせる効果がある。
2. begging signal: 採餌から帰巣したハチから蜜のサンプルを求める。

ワーカーパイピングを行うハチは、上記の振身ダンスを行う傾向がある。

クィーンパイピング (queen piping)
セイヨウミツバチの女王蜂は450 Hz,数100ミリ秒-数秒の音節を数回から数十回繰り返す。これはクィーンパイピングと呼ばれ、現在までに2種類の鳴き方(クワッキング、トゥーティング)がわかっている。クワッキングは王台(女王蜂専用の巣房)の中の処女女王が、トゥーティングはコロニー内での歩行中の女王が行う。処女女王は王台から出た後、頻繁にトゥーティングを行う。トゥーティングは女王が立ち止まって胸部を巣に押し付けて翅を閉じた状態で胸部の筋を収縮させ、胸部で共鳴させることにより非常に大きな音を生じる。パイピングは、巣の中に複数の女王がいる時に非常に頻繁に起こることから、女王同士の闘争鳴きであると考えられている。また働き蜂への力の誇示を通して、女王としての権威を保つ役割を持つとも考えられている。それに対し、クワッキングは王台から出ることを阻まれている女王バチが発する鳴きで、すでに王台をでて歩き回っている女王バチのトゥーティングに対抗し行う鳴きである。

シマリング (Shimmering)
ニホンミツバチ特有に見られる防衛行動である。天敵の存在や巣への侵害振動等により、巣板上の多数の働き蜂が一定方向に体を左右に振動させる行動である。発生源から連鎖的に広がるため、波をうっているようにみえる。その伝達機構については不明である。

b. 嗅覚コミュニケーション(フェロモンによる)

女王フェロモン
社会性昆虫は階級分化物質や女王物質と言われるものによって、階級社会の形成と維持をしている。女王バチが発する女王物質(queen substance)は、他の雌の卵巣の発育が抑え、働きバチとしての行動を起こすように働く。もし、女王が死んだ場合、この物質の供給が途絶えるので、働き蜂や幼虫の中から生殖能力のあるものが現れ、新たな女王となる。女王の大顎腺から分泌される。(ウィキペディアより)

リクルートフェロモン (recruit pheromone)
ナサノフ腺のフェロモンで、働き蜂が採餌価値の高い花などで放出し、仲間を呼ぶ作用がある。

警報フェロモン (alarm pheromone)
外敵の存在を仲間の個体に知らせる。刺腺から分泌される。酢酸イソアミルが含まれる。

集合フェロモン (aggregation pheromone)
巣門で外のハチを巣に誘引するよう帰巣を助けている。ナサノフ腺由来である。


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